2022年10月18日。晴天の日曜日。

オリーブ畑は山にあるからね、とだけ聞いていたので、なだらかな丘にあるオリーブ園を想像していたら、のぶさんが運転する軽トラックは、国道を抜けると急に山道を走り出します。舗装されていない山道をずんずんと15分ほど登っていきます。

上り詰めたところでようやく車を降りて一歩進むと、視界が一気に開けて、見渡す限りの空と太陽の光とオリーブの木。

　紀伊半島の山並みが目の前に開け、遠くには太陽の光を反射した白浜のまぶしい海が見え、太陽が近く、山肌を上がってくる心地よい風がオリーブの葉をキラキラと白く翻ります。ここは、標高400ｍ。約300本のオリーブの木が、なかなかの急勾配の斜面で育っています。ミッション種、ルッカ種、ネバディロブランコ種があり、ジャイアントカラマタ種の植栽が最近行われたばかりで、徐々に栽培面積を増やしています。

　その日の収穫作業は朝から始まっていました。すべての収穫は手摘みのみ。まずは、手の届くところのオリーブをどんどん摘んでいきながら、オリーブの木は、横方向はもちろん、上向きにも枝を大きく伸ばしていくので、手の届くはるか上の方の実は、脚立に乗っての収穫になります。脚立に乗った人の手摘み風景を写真に収めようとしたのですが、オリーブの木に埋もれて人の姿は外からは見えず...。

ここで、スペインでは見られない光景だったのが、上に伸びた枝をバッサリと剪定を兼ねて切り落とし、その枝から実を摘んでいく地面での収穫作業は初体験でした。日本ならではの光景なのかもしれないです。

　さて、収獲開始！

まだ緑果の実、紫に色づき始めた実、すっかり葡萄色になった実がたわわになっている枝から、出来るだけ状態の良い実を摘んでいきます。理由は、この農園には搾油設備がないため、搾油のために摘んだ実を小豆島まで運ばなければいけないので、時間との勝負。小豆島は、その近辺のオリーブ園からの搾油を引き受けているので、決まった搾油日と時間を最大限有効に利用するためには、出来るだけ状態の良い実を出来るだけ沢山収獲する必要があります。現在のところ、その搾油のスケジュールに合わせて収穫することになるので、実は、この山でできた実の10％～15％くらいしか収穫できないというのも現実です。もっと沢山の実が採れるのに、とてももったいないのです。ですが、そんなもったいないことをしているわけにはいかないので、オリーブ漬けとして出来るだけ多くの実を活用しようとしています。

　なので、気持ちの良い風に吹かれながらのんびりと収穫とはいかず、ある程度良さそうな実をどんどん摘んでいき、あとは、搾油に適した実を選別する「選果」の工程に委ねます。この白浜オリーブは、ラベルを貼ったボトルで出荷するのは今年で2年目。

陽が落ちる少し前まで収穫を続け、夜中まで選果をして、ようやく夜を徹して小豆島に運ばれます。そして、翌早朝から搾油を始めて、白浜産のエキストラバージンオリーブオイルが出来上がります。収穫から24時間以内の搾油を実現するために本当に24時間農園は動き続けています。

今回、案内してくださっていつもやりとりをしている小林さんとご両親。

ご両親が選果をやってらっしゃいました。写真撮っていいですかと聞くと、いいよ、と、おふたりとも照れながら優しく笑ってました。こんな感じで手作業でやってるんだなとしみじみと感じるひと時でもありました。

　だんだんと夕方に近づいて、もっと沢山収獲したいという思いからか、皆、無口になってきてラストスパート。

17時を過ぎて空が夕焼けで赤く染まった頃、本日の収穫作業は終了です。摘んだ実をケースに集めて、トラックに積み込んで、残りの選果作業は山を下りてからも続きます。午後から参加の私を入れて男性５人、女性2人でその日は約150㎏の収穫でした。

　最後に。

　今回、5時間ほど収獲をさせて頂きました。

女性ふたりがかりで（といっても、ふたりとも初心者）１本の木のオリーブを２時間かけて摘み続けても、収穫量は10㎏ちょっとにしかならず、手慣れた摘み手ならば40㎏採れるそうなので申し訳なかったです…。「手摘み」を実際に体験してみると、収獲の楽しさはあるものの、でも、やはりそれは「労働」でした。手摘みって、とてつもなく大変なことでした。でも、同時に、１本の木を一緒に摘んだもとみさんとは初対面でしたが、オリーブの枝と実の間でお互いの姿はよく見えないまま、自然と会話が始まり、それがとても楽しかったのです。こうやって、近所の人や、友達、仕事仲間が集まり、収獲や農作業をしながら、家族のことや出かけた先のことなど他愛のない話をするこの時間は、何物にも代えがたいように思えました。それが一番の私の収穫でした。

　白浜オリーブの皆様、ありがとうございました。